大判例

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東京高等裁判所 昭和49年(う)39号 判決

被告人 山下洋幸

〔抄 録〕

以上の事実は原判決もほぼ同旨の認定をしているのであるが、これらの事実を前提として、本件において、果して被告人に対して、原判示のように「荷台に材料が積載してあり荷台も上昇途中の位置に止めてあったから荷台を上昇限度一杯にまで上げて空荷にしてある通常の場合と異り、ロッド操作を行なうことによって荷台が急激に降下して山口の身体が挾圧される危険がある」ことを予測し、「荷台が急降下してくる位置でロッドの操作を行なおうとしている山口に対し、危険を告知してその注意を喚起し荷台の降下位置から身体を外した状態でロッド操作を行なう」よう指示し、事故の発生を未然に防止すべき業務上の注意義務を課することができるかについて検討する。

たしかに、本件の場合、荷台には被告人又は山口がそれまで各自数回ロッドの操作をしたときとは異り、荷台は上昇限度一杯の約六〇度にまで上げられていないうえ、荷台には重いシートパイルが積載されており、シートパイルの重量も加わりロッドの操作をすれば荷台が急降下してくる状況であったことには相違ない。しかしながら、前記のとおり荷台を下降させる場合には運転席にいる被告人としてはなんらの操作をする必要はなく、山口がロッドの操作をするだけで足りるのである。従って、荷台を下降させる作業は、本件ダンプカーを後退させるために行なわれたものであるが、運転行為とは別個の作業であって、運転行為そのものではなく、その時車両の運転をしていた被告人としてはロッド操作をする山口に指示命令を与える立場でもなかった。たしかに、一般に自動車の運転者は車両の積載の状態や道路状況などを考慮して安全運転をなすべき注意義務を負うものであるが、本件の場合荷台を下降するためのロッドの操作は被告人の運転行為とは別個の作業であって、運転行為ではない。ことに、山口は被告人から荷台をおろしてから車両を後退させることを告げられており、荷台が自分のやるロッドの操作だけで下降し運転手はなんらの操作をする必要のないことを十分承知していたことは、同人がそれまで被告人と交替で何回も運転手をしたりロッド操作をしていることから推認することができる。以上の諸点を併せて考察すると、本件の場合、被告人が自動車の運転をしていたからといって、ロッド操作をしようとしている山口に対して原判示のようにその動静に留意していて、危険の発生を告知すべき注意義務を課するのは相当ではない。原判決は、事実を誤認し、よって刑法二一一条の解釈適用を誤ったものといわざるを得ない。論旨は理由がある。

(寺尾 丸山 和田)

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